時計製作職人
七宝の芸術
洗練された多彩な技術
七宝は、珪砂(石英)を主成分とするガラス質の物質にさまざまな酸化金属を混ぜ合わせた融解性の物質であり、光沢のあるなめらかな表面を形成します。七宝は美しい外観と優れた耐久性で知られる装飾です。パテック フィリップの幻術的な七宝は、炉の中で素材と金属が融合することで生まれます。七宝職人はまるで錬金術師のように、金属、色彩、炎、さらにはクロワゾネ七宝、シャンルヴェ七宝、パイヨネ七宝、グリザイユ七宝といった、伝統的な技術を自在にあやつります。
七宝職人が使う工具
七宝は複雑でさまざまな技法があるため、職人は生涯にわたって幅広い工具について習得しなければなりません。当社の品質規準を満たす文字盤を作るのに必要なレベルの精度と技術を身に着けるには、何年もの修行が必要です。
七宝のさまざまな技法
パテック フィリップの七宝職人は、次の4つの伝統的な技法を巧みに操ります。ときにこれらを組み合わせて用いることもありますが、これらすべての技法を習得しているのは、ごく限られた数の職人のみです。いずれの技法も、釉薬が溶け合うことで、一つのタイムピースの中で調和的に融合し、非常に繊細な色合いを生み出します。そしてどの技法にも数多くの工程があり、焼成の度に職人の技量と献身が試されるため、途方もない時間と忍耐を要します。
クロワゾネ七宝
直径0.5mmに満たないゴールド・ワイヤーを巧みに曲げて複雑なデザインを作り、釉薬を塗った地板に固定します。これを一度加熱した後、各々の囲いの中に厳選した釉薬を塗っていきます。釉薬の種類、色、そして目標とする効果に応じて、必要な焼成の回数を増減します。焼成を行うたびにディテールが洗練され、釉薬の色の強みや深みが増し、透明感と深みの効果が洗練されていきます。
シャンルヴェ七宝
釉薬を囲いの中に埋めるという点ではクロワゾネ七宝と同様ですが、この技法では金属素材をあらかじめ削り取った部分に釉薬を施します。この切削は、大量生産品のシンプルな装飾であれば、多くが機械によって行われるのが一般的です。しかしパテック フィリップでは、手作業で複雑なデザインの彫金が行われ、ユニークピースとして創作されます。七宝画家はくぼみに丁寧に釉薬を埋め、目指す色合いに仕上げることで、デザインに命を吹き込みます。
パイヨネ七宝
第3の技法であるパイヨネ七宝では、微細な金箔をさまざまな形状に切り抜きます。この装飾小片はパイヨンと呼ばれ、透明な釉薬(フォンダン)の層に巧みに埋め込むことで、魅惑的なきらめきが生まれます。
七宝細密画
この希少な技法では、水ではなく油を混ぜた釉薬を用い(パテック フィリップの七宝細密画では通常ラベンダー油を用います)、極細の筆で表面に絵画を描いていきます。著名な画家の作品や表情豊かな肖像画、精緻な風景画、生命力あふれる複雑な光景などを、見事な細密画で再現することができます。
パテック フィリップ・コレクションの七宝装飾モデル
《EMAIL》の文字
パテック フィリップの文字盤に記される《EMAIL》の文字は、フランス語の七宝にあたる《émail》を意味し、七宝文字盤の時計であることを示します。パテック フィリップは卓越したクラフトマンシップとディテールへの配慮で知られていますが、最も芸術性と収集価値の高いモデルには七宝を用います。文字盤の《EMAIL》の文字は、パテック フィリップが何年も大切に保護してきた、人の手がつくる伝統的な七宝の技法が用いられていることを示します。